「君のせいじゃない」 〜V2案件彼氏持ち宝石店店員とのアポ〜


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「It’s not your fault. It’s not your fault.」
(君は悪くない。君は悪くないんだ。)

グッド・ウィル・ハンティング

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某日 週末


最寄り駅の地下鉄地上出口で、彼女を待っていた。彼女と出会ったのはとある週末のV2。お立ち台で踊っていた彼女が疲れてダンスフロアを後にしようとした瞬間にナンパした。VIPで知り合いと飲んでいたらしく、戻るまでなら、という条件をもらい、ダンスフロア脇の通路で暫くの間彼女と談笑した。



『もう戻らなきゃ』



そう言われたタイミングで、番ゲ打診をした。そして、短いメッセのやりとりをした。正直不安だった。この短いなごみで次回のアポにつながるかどうか。本来ならもう少し仕上げが必要だった。だから、今日、このアポが成立するかは、最後まで分からなかった。


待ち合わせ時間の2分前。エスカレーターを上から覗き込んでも、彼女の姿は見えない。待ち合わせ時間3分後。まだ彼女の姿は見えない。とんとん、と肩を叩かれた。驚いて振り向くと、彼女がいた。



『出口間違えちゃった♪』



ハルトはすこし笑って、「行こっか」と言い、すぐに歩き出した。黒のコート。巻き髪。整った小さい顔。赤い口紅。直視できなかった。クラブマジックは一切なかった。彼女は本当にきれいだった。



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『あの日はひとりでいたの?』



とあるバーで乾杯をした後、彼女がハルトに質問をしてきた。「いや、知り合いと飲んでたよ。あの時はたまたま」ハルトはソロメインだ。いつもの言い訳をいつものように彼女に向かって話す。そこから、彼女のことをイジりながら恋愛の話に持っていく。ここからは、もうオート・パイロット(自動操縦)だ。


彼女は20代後半。
東京出身。
実家ぐらし。

そして、現在はとある有名宝石ブランドの販売員をしている。



恋愛については、あまり深く聞き出せなかった。正直にペラペラとしゃべってくれる子のほうが、はっきり言って即りやすい。正直な子は、たいてい、警戒心がない子であることが多い。彼女は、そのどちらでも無さそうだった。少し嫌な予感がした。



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『私、家には行かないわよ』



バーを出てからの家打診は、即効で断られた。「どうして?」ハルトは聞いた。『体目当てなのバレバレ。てか私、彼氏いるし』ここまで絶望的なグダは久しぶりだった。どうしようか?ハルトは考えた。グダ崩しをしなくてはならない。しかしその前に、グダ崩しが出来る環境を整えなければいけない。



「じゃあ、二軒目に行こうよ」



そう言って、ハルトは歩き始めた。そこで、彼女とたくさんおしゃべりをした。彼氏とはいつから付き合ってきたのか。彼氏はどんな人か。どれだけラブラブなのか。


そして、繁華街を抜けたあたりで聞いた。彼氏がいることを、なぜこのタイミングまで、黙っていたのか。


「いままで黙ってたってことは、正直、俺のこと少しでも良いと思ってくれたんでしょ?」


『。。。』


『確かにいま君はその彼氏と付き合っているけど、もし違うタイミングで出会っていれば、結果は違っていたかもしれないよね?』


『でも。。』



ここで、立ち止まり、肩を抱いた。



「○○のせいじゃない」
「○○は悪くない」


「だから、正直になって」



ここで、キスをした。そして実はすぐ近くまできていた、ハルト邸で準即。言葉に反して、体はとても正直だった。


彼女は知り合いが多く、その知り合いによくクラブに連れて行ってもらうそうだ。幸運なことにV2の常連客ではなかった。良かった。はち合わせて彼女を失うことになるのは嫌だから。





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