「どうしてこんな風にしちゃうの?」 〜V2案件ショールームスタッフ〜


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振り向くな、振り向くな。
後ろには夢がない。

寺山修司

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『お待たせ♪』



いつもの最寄り駅に、彼女は時間通りにあらわれた。黒のコートに、上品なハイヒール。黒めの長髪はしっかり巻き髪になっている。抜かりない大人のメイクの下に、彼女のまぶしい笑顔がきらめいていた。



彼女と出会ったのは週末のV2。5人くらいの大集団の中にいたところを引き抜いてなごみ、番ゲをして連絡を取り合っていた。



『○○くんが一番素敵だったよ♪』



彼女はラインでそう言ってくれた。アポも、トントン拍子ですぐに決まった。そしてアポの当日。彼女は時間通りにあらわれ、キメキメの格好で来ている。ハルトは勝利を確信した。今夜の準即は固いと思った。



いつものバーで、彼女とおしゃべりをする。彼女は東京生まれ東京育ち。良いところの高校・大学を経て、現在はとある企業のショールームスタッフをしている。身長は165センチほど。細身。長い足。



なにより、身のこなしがとても上品だった。



接客業の女性にありがちだが、その愛想の良いふるまいとは裏腹に、実際は人見知りなことが多い。彼女も例外ではなかった。ハルトの話を決して否定しない。笑顔が多い。でも、一定の距離が感じられる。



心の距離を縮めなくては。その先に進むには、それしかない。ハルトは必死に彼女の心に近づくよう、会話を重ねていった。




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『じゃあ、少しだけなら。。』



自宅グダをなんとか突破し、ハルト邸へとINした。しっかりと掃除した部屋。アロマ。間接照明。リラックスする音楽。スパークリングワイン。すべては順調だった。すべてはいつも通りだった。



タッチを試みる。少しグダ。『ダメ』理由を聞いて崩す。グダ。ギラ。ベッドへ移動し、キス。今日も難なく、準即を決められると思った。彼女を見た。悲しそうな表情だった。彼女は言った。



『どうしてこんな風にしちゃうの?』


『私、ハルトくんのこと、ほんとにいいと思ってたのに。。。』



手が止まった。真性グダ。いや、厳密に言うとグダではない。このままいけばセクはできる。しかし、今後については、おそらくもう会うことはできない。



ここで一気にギラをしてセクをすると、彼女は今日の出来事についてフタをして、なかったことにしようと試みるだろう。自分の気持ちとしてはどうだ?彼女はとても魅力的だった。愛想はいいけど、実は人見知り。すぐ人を信じる癖がある。悪い男によく引っかかる。彼女を愛くるしいと思った。彼女が愛おしいと正直に思えた。



だが、自分は何が目的だ?ハルトはクラブナンパマスターを目指している。クラブナンパを極め、クラブにいる美女を自由自在に即れるような男性になりたいと思っている。



この場面を突破して、彼女と長期間の関係を結ぶテクニックもあった。未来への期待感をマネジメントするやり方。一度まったりと過ごし、自然な流れでセクするやり方。いろいろあった。いくらでもやる方法があった。しかし、それをやると、今後何度も会う必要が出てくる。それをあと腐れなく感じられる女性ならば問題ない。しかし彼女は?少なくとも、彼女はそのような女性ではなかった。



ハルトは、彼女が望んでいるものを叶えることは出来ない。



だとしたら、一刻も早く、彼女の世界から姿を消そう。



彼女とセクをした。そして、泊まらずに、そのまま解散した。夜の2時。ケータイを見ると、他の女性からのライン通知がびっしりだった。どうでも良かった。シャワーは明日入ることにした。スマホのアラームだけかけて、そのままベッドに入り眠りについた。






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いまは、どうしても新規即がしたい。色々なテクニックを試して、新規の女性をどう口説くかということに多くの時間を割きたい。


時間は有限だ。それは変わらない。何かを得るには、何かを犠牲にしなければならない。


いまは振り返らずに前に進みたい。どんどん前に進みたい。振り返ってニヤニヤするのは、ヨボヨボの爺さんになってからで遅くはないと思うから。






「どうしてこんな風にしちゃうの?」 〜V2案件ショールームスタッフ〜」への2件のフィードバック

  1. M&M

    文章にとても引き込まれました。
    ハルトさんはキープしない派ですか?

    返信
    1. haru 投稿作成者

      M&Mさん
      キープしますよ!ただ、割り切ってる人とだけです。

      返信

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